野口英世アフリカ賞ニュースレター 第22号2025年5月発行

<ニュースレター第21号

第5回野口英世アフリカ賞 受賞者決定!

2025年4月25日、林 芳正内閣官房長官より第5回野口英世アフリカ賞受賞者が発表されました。授賞式は、本年8月の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の機会に合わせて開催される予定です。

【医学研究分野】

アブドゥライ・ジムデ博士(マリ共和国)

バマコ科学技術工科大学寄生虫・微生物研究研修センター(PMRTC)所長

ジムデ博士
(写真提供:Abdoulaye Djimdé)

[受賞理由]
ジムデ博士は、長年、マラリア撲滅に取り組んできた、アフリカにおけるマラリア対策の中心的な研究者です。幼少期に兄弟をマラリアで失った博士は「マラリアのないアフリカ」という夢の実現に向け、長年、抗マラリア薬の臨床開発等を通じてマラリアの制圧に多大な貢献をされました。バマコ科学技術工科大学の寄生虫・微生物研究研修センター所長として、サハラ以南のアフリカ各国の若手研究者の育成にも尽力されています。

【医療活動分野】

DNDi (ディーエヌディーアイ)
(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) (スイス・ジュネーブ(本部))

DNDi
(写真提供:Brent Stirton Getty Images for DNDi)

[受賞理由]
DNDiは、顧みられない病気で苦しむ人びとのために新しい治療薬・治療法を開発・提供する非営利組織です。「国境なき医師団」が1999年にノーベル平和賞を受賞した際の賞金の一部を活用し、各国の研究機関等と連携して2003年に設立。日本にも支部があります(DNDi JAPAN:特定非営利活動法人)。
パートナーと共に致命的な6疾患に対して入手可能な価格の13の治療薬・治療法を開発・提供し、28か国で臨床試験を実施。アフリカ睡眠病の経口治療薬の開発・提供、研究機関等が参加する「HATプラットフォーム」の設立を通じて同病の治療にも多大な貢献をされています。

詳細については、「野口英世アフリカ賞」ホームページをご覧ください。

國井修 野口英世アフリカ賞委員会委員長からメッセージ

國井修

野口英世アフリカ賞は、アフリカにおける感染症等の疾病対策のため、医学研究又は医療活動分野において顕著な功績を挙げた方を顕彰し、もってアフリカに住む人々、ひいては人類全体の保健と 福祉の向上を図ることを目的としています。選考にかかわったすべての者を代表して、受賞者・受賞団体の卓越した業績に敬意を表するとともに、心よりお祝いを申し上げます。 本賞の受賞者は、厳正かつ綿密な議論を経て選考されます。全世界の有識者や団体などからご推薦を頂いた方々を、医学研究分野推薦委員会及び医療活動分野推薦委員会で検討した後、2025年3月、国際的にも著名な有識者を集めた野口英世アフリカ賞委員会において集中的な議論を通じて結論を得て、総理大臣に最終候補者を推挙し、総理大臣においてこれを決定されました。この場をお借りして、推薦してくださった方々、選考に携わったすべての関係者に心より感謝を申し上げます。

受賞者のご紹介
【医学研究分野】

アブドゥライ・ジムデ博士(マリ共和国)

業績

幼少期に兄弟をマラリアで失うという悲しい体験と若き薬剤師としての経験が、ジムデ博士がアフリカの人々の生命を脅かすマラリアの研究を志すきっかけとなりました。                       これまでの30年間にわたる研究成果は、マラリアの治療と制圧の改善に大きく貢献し、アフリカ各国政府やWHOの保健政策にも重要な影響を及ぼしました。特に、博士は、共同研究者とともに、マリのマラリア流行地でのフィールド調査を通じて、実験室株でクロロキン耐性をもたらすマラリア原虫の遺伝子が、マラリア患者の体内においてもクロロキン耐性の原因であることを明らかにし、さらに現場でのクロロキン耐性を確認できる分子マーカーを設計しました。 また、アルテミシニンベースの併用療法の臨床試験を通じて、抗マラリア薬の安全性と有効性を実証し、さらに、アフリカ12か国(現在は16か国)によるマラリア対策のための共同研究のネットワークであるPDNA(Pathogens genomic Diversity Network Africa)を設立し、実験プロトコルや遺伝子データ等を共有できる体制を構築しました。 加えて、バマコ科学技術工科大学寄生虫・微生物研究研修センター(PMRTC:Parasites & Microbes Research & Training Center)の所長として若手科学者の育成に熱心に取り組むとともに、多くの国際的研究グループと連携する中で、様々な厳しい条件の下にありながら、同センターをマラリア研究の国際的なネットワークのハブに発展させました。 これらの成果により、博士の研究はマラリア流行地域に住む多くの人々の命を救ってきましたが、博士は今も「マラリアのないアフリカ」の夢の実現に向けて尽力されています。

  • ジムデ博士

    寄生虫・微生物研究研修センター(PMRTC)の実験室でマラリアの研究を行うジムデ博士 

  • ジムデ博士

    「病原体遺伝子多様性アフリカ・ネットワーク(PDNA)」の実験室でアフリカ各国の若手研究者の人材育成にあたるジムデ博士

  • ジムデ博士

    マラリアのないアフリカの夢を胸に村人の話に耳を傾けるジムデ博士

(写真提供:Abdoulaye Djimdé )

【医療活動分野】

DNDi (ディーエヌディーアイ)(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)(スイス・ジュネーブ(本部))

DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)は、「顧みられない病気」で苦しむ人々に対して、より安全で有効、かつ使い易く入手可能な価格の治療薬・治療法の研究開発に取り組む非営利組織です。
国境なき医師団(MSF)が、1999年にノーベル平和賞を受賞した際の賞金の一部を活用し、ケニア中央医学研究所(KEMRI)、インド医学研究評議会(ICMR)、ブラジルのオズワルド・クルス財団、マレーシア保健省、フランスのパスツール研究所、WHO熱帯医学特別研究訓練プログラムと連携して、2003年にDNDiを設立しました。

業績

世界には10億人以上が感染して苦しんでいる「顧みられない熱帯病」(21の疾患)がありますが、それを安全で効果的に、そして入手可能な価格で治療できる医薬品が、市場の失敗によって開発・製造されていません。 設立以来、DNDiは国際的なパートナーとともに、アフリカ睡眠病、内臓リーシュマニア症、小児HIV、マラリアを含む致命的な6疾患に対して13の新しい治療薬・治療法を開発・提供し、低・中所得国を中心にグローバルヘルスの改善に幅広いインパクトをもたらしました。 中でも、サハラ以南のアフリカにおいて深刻な被害を及ぼしているガンビア型ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症(gHAT、アフリカ睡眠病の一型)の治療のために、DNDiがパートナーと開発した初の経口治療薬フェキシニダゾールは、その流行国において画期的な効果を発揮しています。また、主にアフリカの流行国の研究機関や専門家が参加するネットワーク「HATプラットフォーム」を通じて、僻地での国際的な品質基準に則した臨床研究の実施等の成果をもたらしています。 DNDiとそのパートナーは、アフリカ睡眠病の撲滅という最終目標に向けた取組に引き続き尽力しています。

  • DNDi

    ボートの船長にフェキシニダゾールの箱を手渡すパトゥ医師。コンゴ民主共和国政府のアフリカ睡眠病対策プログラムの担当医師であるパトゥ氏のチームは、新たな患者が発見されたため、遠隔地の保健所に新しい治療薬を運んでいる。(写真提供:Kenny Mbala-DNDi)

  • DNDi

    コンゴ民主共和国のマシ・マニンバにおいて、DNDiが開発したアフリカ睡眠病の治療薬フェキシニダゾールを医師から受け取る患者(写真提供:Xavier Vahed/DNDi)

  • DNDi

    コンゴ民主共和国のマシ・マニンバにおいて、より安全で効果的にアフリカ睡眠病を治療するためのDNDiの臨床検査の一環として、顕微鏡で脳脊髄液を分析するレオン・カトゥンダ検査技師(写真提供:Xavier Vahed/DNDi)

■第3回野口英世アフリカ賞受賞者
ジャン=ジャック・ムエンベ=タムフム博士 旭日中綬章を受章

ジャン=ジャック・ムエンベ=タムフム博士

2024年11月3日、ジャン=ジャック・ムエンベ=タムフム博士(国立生物医学研究所(INRB)所長)が令和6年秋の外国人叙勲において「旭日中綬章」(きょくじつちゅうじゅしょう)を受章されました。日本・コンゴ民主共和国間の学術交流及び相互理解の促進に寄与した功績から今回受章となりました。同博士は、エボラウイルス病等の研究及び疾病対策の人材育成において多大な貢献をされたこと等から、第3回野口英世アフリカ賞(医学研究分野)を受賞されています。 野口英世アフリカ賞受賞後も、エボラウイルス感染症及び新型コロナウイルス感染症(Covid-19)への国家対応の調整役への任命(2020-2022年)、コンゴ(民)科学アカデミー議長への就任(2021年)、アフリカ公衆衛生国際会議(CPHIA21)での公衆衛生特別功労賞の受賞(2021年)等、幅広い分野で活躍されています。今回の受章を心よりお祝い申し上げます。

<プロフィール>
ジャン=ジャック・ムエンベ・タムフム Jean-Jacques Muyembe-Tamfum
現職:国立生物医学研究所(INRB)所長、キンシャサ大学医学部 微生物学名誉教授

■感謝状贈呈式 野口英世アフリカ賞基金へ多額の寄付を頂いた方々への感謝状贈呈式が行われました

令和5年2月、日本政府は、野口英世アフリカ賞基金に多額の寄附を通じて、同基金の発展に多大な貢献をした個人又は団体に対し、感謝の意を表するため、内閣総理大臣、内閣官房長官または内閣府大臣官房長からの感謝状の贈呈を行う制度を新設しました。令和6年度も、下記の皆様に対して、感謝状贈呈式が行われました。

  • BML

    株式会社ビー・エム・エル

  • 天草第一病院

    医療法人社団永寿会 天草第一病院

ホームページにもご紹介しています。

■株式会社ビー・エム・エル
https://www.cao.go.jp/noguchisho/info/kanshajo_zoutei.html

■医療法人社団永寿会 天草第一病院
https://www.cao.go.jp/noguchisho/info/kanshajo_zoutei2.html

野口英世アフリカ賞基金のためのご寄付のお願い

本賞の賞金原資とするため、本賞の趣旨にご賛同いただける方々からのご寄付を募っています。皆さまからいただいた善意が、アフリカでの医学・医療の向上に尽力されている方々の活動のために使われます。(寄付は控除の対象になります。)これまで寄付をお寄せいただいた方々に厚く御礼申し上げます。

  • 野口英世アフリカ賞基金への寄付実績(2007年~2025年2月時点までの累計)
    655,723,834円  [個人2,137件、法人572件(計2,709件)]

寄付方法のご案内

ご寄付は以下のウェブサイト(右記二次元コード)からオンラインでお申込み頂けます。(クレジット・カード、コンビニ店舗端末、ペイジーでのお支払いが可能です。)

2次元コード

寄付に関するお問合せ

JICA(独立行政法人 国際協力機構)国内事業部 市民参加推進課 寄付金担当
メールアドレス:jicata-kifu1@jica.go.jp
フリーダイヤル:0800‐100‐5931
(受付時間 平日10:00~12:30、13:30~17:00)
FAX番号:03-6689-4760


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